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新規事業を成功に導く「デザイン」の力とは?失敗を防ぐデザイン経営の取り入れ方

「素晴らしい事業計画書はできた。でも、これが本当にお客様に受け入れられるのか、自信が持てない……」

新規事業を立ち上げる際、このような不安を抱える担当者や経営者は少なくありません。

アイデアがどこかありきたりで既存の延長線上になってしまったり、企画書の中では完璧だったコンセプトが、いざ製品にしてみると「何だか使いにくい、魅力が伝わらない」とズレていったり。これらは、多くの新規事業の現場で繰り返されがちな悲劇です。

こうした失敗を防ぎ、事業を大成功に導くカギこそが「デザイン」の力です。 現代のビジネスにおいて、デザインが重要になる理由は大きく2つあります。

・イノベーションの起点:お客様自身も気づいていない「本当の悩み」を掘り起こし、これまでにない事業の種を見つけること
・ブランドを作る手段:会社の想いやサービスの価値を、お客様が感動する「使い心地(一連の体験)」として一貫して届けること

機能やスペックだけで差別化するのが難しくなった今、計画の最初の段階から「デザイン」の視点を取り入れることが、他社に負けない独自価値を生み出す最大の武器になります。

この記事では、新規事業においてデザインをどのように実践活用し、成功率を跳ね上げていくのか、その具体的なアプローチを分かりやすく解説します。

デザインを「見た目」だけで終わらせない —本来の役割と新規事業へのつながり—

まず出発点として、デザインという言葉の定義を整理しておきたいと思います。

ビジネスの現場では、今なお「デザイン = 最後の仕上げに、ロゴや画面をお洒落に整える作業」という勘違いが根強く残っています。その結果、事業計画が100%固まった後にデザイナーを呼び、表面だけを綺麗に飾って終わり、という形になりがちです。

しかし、これはデザインが持つ本当のパワーの、ほんの1割しか使っていない「もったいない状態」です。

本来のデザインとは、「目的を達成するために、お客様の体験、課題を解決する仕組み、プロセスの全体を論理的に組み立てること」を指します。

つまり、頭の中にあるビジネスのアイデアを、お客様が実際に触れ、感動し、ファンになってくれるような「一連の体験(UX)」へと具体化していくプロセス全体が、デザインの本質なのです。

デザインの持つ本質的な力とは

国(経済産業省・特許庁)の指針でも、デザインの本質的な力は次の2つの役割を果たすと定義されています。

・ブランドを形作る
サービスの価値観や世界観を、お客様が触れるすべての接点で一貫して体験してもらい、強い信頼感(ファン)を育てる
・新しさを生む(イノベーション)
売り手の思い込みを捨ててお客様を中心に据え、これまでの常識にとらわれない解決策を柔軟に生み出す

新規事業に引き直すなら、デザインとは「この事業が愛される理由」の設計であり、「誰もまだ言葉にできていない、お客様の本音を形にするプロセス」です。この2つが機能したとき、ライバルに真似されず、市場に長く愛される事業が生まれます。

新規事業開発が「既存の延長」に陥りやすい3つの課題

課題①:顧客の「本当の困りごと」が見えていない事業企画

多くの新規事業は、「アンケート調査 → 競合分析 → 儲かる仕組みの策定」というロジックや数字中心の流れで進みます。もちろんこれは大切ですが、これだけではお客様自身も気づいていない「本当の不満」を見つけるのは不可能です。

すでに目に見えているニーズだけに応えようとすると、どうしても他社のマネや、既存サービスのマイナーチェンジに終わってしまいます。差別化のヒントを見つけるには、数字だけでなく、お客様の行動をじっくり観察し、直接対話する「デザインの思考」が絶対に欠かせません。

課題②:「コンセプト」と実際の「体験」の分断

「企画書に書かれたコンセプトは最高だったのに、出来上がったアプリや製品を使ってみたら、その魅力がサッパリ伝わらない」というケースは珍しくありません。

その原因は、「企画する人(言葉で考える人)」と「作る人(コードや形にする人)」の分断にあります。コンセプトが言葉だけの状態で開発に回されると、実装する人の解釈で中身が少しずつズレていき、リリース時には本来の意図とかけ離れた別物になってしまうのです。

課題③:デザインを後回しにすることで生じるリリース後のズレ

「中身がすべて固まってから、最後に画面のデザインを綺麗にしてもらおう」という発想ではデザインの本来持つ力を活かすことができません。

なぜなら、機能や仕組みがすべて確定した後にデザイナーが入っても、「どう見せるか」という表面の化粧直ししかできないからです。「そもそもこの機能、お客様にとって本当に使いやすいの?」という根本的な大問題が、リリースされるまで見過ごされてしまうリスクが生まれます。

なぜ「上流からのデザイン参画」が、新規事業の成功率を高めるのか

デザインは「正しい問いを立てる」ためのツール

プロジェクトの最初の段階(最上流)からデザインの視点を入れるということは、単に「デザイナーを早めに会議に呼ぼう」という意味ではありません。

お客様を観察し、本音を抜き出し、アイデアを素早く形にして実験する──という「デザインのプロセス」そのものを、事業づくりの最初から組み込むということです。

ビジネスプランは「解決策」の設計図ですが、その前段である「解くべき課題(問い)」がズレていては、どれほど緻密な計画も失敗に終わります。デザインの力は、この「正しい課題を設定する力」を事業にもたらします。

「ビジネスモデル」と「体験設計」を同時に進める相乗効果

「事業計画 → 機能決定 → 画面や体験の設計」という一方通行の進め方ではなく、ビジネスの仕組みとデザインを同時並行で進めると、次のような圧倒的なメリットが生まれます。

・市場にマッチするスピードの向上
試作段階でお客様から得た気づきを、すぐにビジネスモデルの修正に活かせるため、サービスの進化が速まります。
・致命的な手戻りの削減
「事業として成り立つか(ビジネス)」と「本当にお客様が使いたいか(体験)」を常にセットで検証するため、開発が無駄になりません。
・社内・投資家への説得力が爆発的に上がる
言葉だけの企画書ではなく、「実際の使い勝手がイメージできる形(目に見えるデザイン)」があるため、会議での合意形成や投資家への説明がスムーズになります。

事業コンセプトから体験設計までを一貫して進める 4 つのステップ

新規事業において、デザインの力をどのように活かしていけばよいのか。実践的な 4 つのステップをご紹介します。

ステップ 1:「ユーザーの行動観察と本音の抽出」 —課題設定を正しく行う—

最初のステップは、ターゲットとなるお客様の行動や感情、その背景を深く理解することです。アンケートで「何が欲しいですか?」と尋ねるのではなく、実際の行動を観察し、言葉にならない不満や欲求(顧客の本音)を発見します。

ここで重要なのは、「解決策(機能)を先に考えない」ことです。「こんな機能があれば売れるはず」という思い込みを捨てて見つけたお客様の生の声こそが、他社に絶対真似できない事業コンセプトの原石になります。

ステップ 2:「事業コンセプトの可視化」 —ビジョンを体験に具体化する—

発見したアイデアを言葉だけの企画書にとどめず、お客様の体験ストーリーとして目に見える形にするステップです。

お客様がサービスに出会ってから使い続けるまでの流れを描いた地図(カスタマージャーニーマップなど)を作ることで、チーム全員が「このサービスがどうお客様を幸せにするのか」という具体的な共通イメージを持てます。この「体験の可視化(デザイン)」が、企画と開発の間で起きる意見のズレを防ぐ、最強のコミュニケーションツールになります。

ステップ 3:「試作と検証」 —本格的な投資の前に市場の反応を確かめる—

コンセプトと体験のイメージが固まったら、できるだけ早い段階で試作品(プロトタイプ)*1を作り、実際のお客様に試してもらいます。

試作品は、最初から完璧なシステムである必要はありません。紙に描いた画面の図や、デザインツールで作った簡易的に動かせるモックアップ*2(画面イメージ)でも、「直感的に使えるか」「価値を感じてもらえるか」を確認するには十分です。本格的な開発コスト(予算)をかける前に、分かりにくい部分や不満を早期に発見して軌道修正を繰り返すことで、新規事業の死亡率を劇的に下げることができます。

ステップ 4:「体験設計と事業ロジックの同時最適化」 —作りながら磨く—

試作によってアイデアの確信が持てたら、実際の開発フェーズへと移行します。ここでも、「デザインを考える人」と「ビジネスを推進する人」が分断されることなく、常に対話しながら進めます。

一度決めた仕様に固執するのではなく、テストの結果や市場の反応を見ながら、事業モデルや機能を柔軟にアップデートしていく。この「お客様の体験に合わせて、作りながら磨き上げる」というデザイン特有のアプローチこそが、新規事業を成功へと導く最も現実的なルートです。

【一気通貫アプローチの全体像】

・本音の抽出: お客様を深く理解し、本当の課題(問い)を発見する
・コンセプト可視化: 顧客体験の流れを描き、サービス全体のストーリーを形にする
・試作と検証(ダブルダイヤモンド*3): 簡易的な試作品(モックアップ)で、テストと修正を素早く回す
・体験設計 + 事業ロジックの同時最適化(ウォーターフォール*4からの脱却): 一方通行の開発(ウォーターフォール)を脱却し、「使われる体験」に合わせて事業モデルを磨き上げる

*1 試作品(プロトタイプ):アイデアや検証したい機能を簡易的に形にした、テスト用の模型やサンプルのこと

*2 モックアップ:実際の製品に近い見た目や操作感をシミュレーションできる、動く画面イメージのこと

*3 ダブルダイヤモンド:課題の発見・定義から解決策の作成・提供に至るまで、思考を広げては絞り込む工程を 2 回繰り返すデザイン手法

*4 ウォーターフォール:要件定義書が固まった後に、後戻りせず一方通行で進める従来の手法

事例:「作る前の問い」と「コンセプトから体験まで」を実践

ここまでの4ステップ——正しい問いを立て、コンセプトを体験に落とし、磨いていく——が、実際の現場でどう形になるのか。Cloud Creativeが伴走したA社の事例をご紹介します。

「届けたい情報」から「受け取りたい情報」へ視点を切り替える

本記事のステップ1「ユーザーの行動観察と本音の抽出=正しい課題設定」を象徴する事例です。教育領域でご活躍するコンサルタント様より名刺の制作をご依頼いただきました。当初は、事業拡大に向けて「自社のサービス内容をすべて網羅した名刺にしたい」というご相談でした。新規事業でもよく起こることですが、スタート時はどうしても「自分たちが提供できること(自社目線)」の発信に集中してしまいがちです。しかし、大切なのは「それを受け取ったお客様がどう感じるか」という視点です。

そこで私たちは、いったん「全部載せる」という前提を外し、「相手はどう受け取るのか」という顧客側の視点から問いを立て直しました。導き出した答えは、機能の羅列ではなく「まず「この人は面白い」と感じてもらう」こと。あえて情報を絞り、そこから会話が生まれる設計にしたところ、印象に残って人が繋がり、新たな案件が増え、後にはウェブサイトの制作までご依頼いただく流れが生まれました。

自社が「伝えたいこと」をそのまま出すのではなく、お客様の「受け取りやすさ」から逆算して問いを立て直すこと。上流にデザインの視点を置くとは、まさにこの視点の切り替えにあります。

新規事業でも既存事業でも、成否を分けるのは「作る前」にあります。顧客の本音から「正しい問い」を立てられているか、そしてコンセプトを、顧客が触れる体験まで一貫して届けられているか。A社様は思い込みを外した問いの立て直しで、それぞれ独自の価値にたどり着きました。上流にデザインの視点を置くとは、まさにこのことです。

まとめ:新規事業の成功は「上流のデザイン」から始まる

デザインの本質とは、単に見た目をきれいにする装飾品ではなく、「企業のビジョンをお客様の感動体験へと具体化し、課題を解決する仕組みそのものを設計すること」にあります。

新規事業において、デザインを「最後のお化粧直し」として後回しにすることは、事業の本当の可能性や課題を見落とす大きなリスクを伴います。

ロジカルに緻密な事業計画を立てる「左脳の力」と、お客様の潜在ニーズからワクワクする体験の形を広げるデザインの「右脳の力」。この2つを一番最初の段階から融合させることこそが、不毛な価格・機能競争から抜け出し、独自の価値を持つ強い新規事業を生み出すための、最も確実なアプローチです。

Cloud Creativeの新規事業デザイン伴走支援・ユーザーリサーチ

「事業計画はできた。でも、本当にお客様に受け入れられるか自信が持てない」——その不安の正体は、多くの場合「作る前の問い」と「コンセプトから体験への一貫性」が、まだ設計されていないことにあります。

Cloud Creativeでは、新規事業やユーザーリサーチに取り組む経営者・事業責任者の方を対象に、無料のオンライン相談を実施しています。いきなり制作に入るのではなく、「解くべき本当の課題は何か」「そのコンセプトをどんな体験で届けるか」を上流から一緒に設計します。

  • ユーザーの本音を掘り起こすリサーチ設計のご提案
  • 事業コンセプトを体験(カスタマージャーニー)へ可視化する伴走
  • 本格開発の前に試す、プロトタイプ検証の進め方

まずは構想段階の「もやもや」や、企画書を見せていただくだけでも大丈夫です。デザインで解決できる方法をご提案します!

参照サイト

経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣言』(2018年5月23日)

特許庁「デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための”デザイン経営”ハンドブック」

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